2015-05-30

俗字のバカ野郎

近鉄・奈良線の電車内の吊り広告=2015年5月29日

新聞社・通信社はどこも、

「たんけん」は「探検」、
「ぼうけん」は「冒険」と表記することになっています。
「検」と「険」に使い分けですね。

「冒険」の「険」を「検」にすると、
明らかに間違いって感じですけど、
微妙なのは「たんけん」ですね。

きのうも仕事で近鉄奈良線に乗っていたら、
「明治探険隊」と印刷された吊り広告を見ました。
明治村(愛知・犬山市)のイベントの宣伝です。

「たんけん」が「探険」と表記されると、
職業的に染み込んでいる意識が、

違和感を覚えるわけです。

実際、大学のクラブ・サークルは「探検部」が一般的ですし、
インターネット百科事典「Wikipedia」で調べても、
「たんけん」は「探検」です。

しかし、
辞書で引くと、
「探検」「探険」が併記されているのがほとんどです。

固有名詞にしても、
漫画家の東海林さだおさんのエッセー集は『行くぞ!冷麺探険隊』(文春文庫)で「険」をつかっています。

また三島由紀夫は『豊饒の海』のなかで「探険」を使用しています。

さらに、古代漢字研究の第一人者で文化勲章も受章した白川静の字書三部作のなかの漢和辞典『字通』(平凡社)の「探」の項(1057ページ)には「探険」しかなく「危険を避けずにしらべる」とあります。
ただし「検」の項(442ページ)の語彙のなかに「探検」がありますから「危険」の有無が表記に関係しているようです。

…というわけで、
どちらでも良さそうですが、
僕は「探検」を使い続けるでしょう。
深い意味はないけど、
馴染みの問題ですね。

ちなみに
「波瀾万丈」も「波乱万丈」と書くのは誤りだとの説があって、
新聞では「波瀾万丈」を使いますが、
これもどちらでもいいみたい。
僕が小学生のときに使った古い辞書でも併記されています。

でも「波乱万丈」と紙面に載って、
「間違いだ」という指摘の電話などをいただいたことがあります。
「波乱」は誤用だと信じこんでいる校閲記者もいて、
往生したことがありますが、
詳しくは書きません。

職業病というか、
印刷物などの表記は気になります。

人名になると間違いは歴然ですので、
言い訳ができない。
…ということで、
「これは気をつけないといけない」という間違いやすい典型例があります。


たとえば、
「緒形拳」を「緒方拳」としてしまいそうになるのが一例で、
「萬屋錦之介」と「中村錦之助」がごっちゃになって、
「萬屋錦之助」とか「中村錦之介」としたり、
「世良公則」が「世良政則」になったり、
「中村美律子」が「中村美津子」と惜しかったり…。
ただ、この場合「美津子」が本名らしいので、
微妙ですね。

それから兄弟なのに、
「蘇峰」は「徳富」、
「蘆花」は「徳冨」…というややこしいケースもあります。
(ぱっと見て違いがわかりますか?)

個人的に苦手なのは自分の姓の俗字表記にこだわる人間です。
(ちなみに「冨」も俗字)
特に姓に多い「高」と「崎」の俗字。
このふたつの漢字の俗字は機種依存文字なので、
インターネットなどの場合、
ちゃんと表示されないことがあります。
新聞社のサイトの場合、
機種依存文字は使いませんから、
本来の文字を使います。

「高」の俗字はいわゆる「はしごだか」
「崎」は「大」が「立」という表記です。
「澤」は「沢」の旧字・本字ですけど、
それとは意味が違う。
俗字の場合は、
ちゃんと正しい字があって、
俗字の方はデザインの問題みたいなもんです。
その証拠に「高校」の校章は「はしごだか」が使われているケースが多いですよね。
NHK連続テレビ小説の『純情きらり』は愛知県岡崎市が舞台ですけど、
番組のなかに登場する味噌屋かなんかの店の方が着ている法被(?)の染められている「岡崎市」の「崎」は俗字でしょ。

僕の名前にも「崎」が入っているんですけど、
戸籍上では、
俗字のほうなんです。

でもね、
これは多分むかし役場の人間が、
本来の「崎」を、
俗字で手書きしたのが活字化されデジタルデータになったときにそのままになっただけでしょう。

その証拠に、
僕の親戚の墓の表記は昔から「崎」です。
どうも親戚内でも、
住んできた地域によって戸籍・住民票も、
「崎」と、その俗字が入り混じっているようです。

で、
何が面倒かというと、
戸籍が俗字だと、
ネット上の表記も「そちらで」とこだわる方がいます。
俗字を旧字・本字だと誤解しているバカ方もいらっしゃいますし。

それから銀行に行って、
書類の名前の欄に「崎」で書くと、
身分証明書にした運転免許証の表記と違うっていうんで、
訂正させられます。
面倒です。

こだわりたい方はいいですけど、
もう法律で俗字の場合は、
戸籍が俗字でも、
正字で問題なし!ってしてくれませんかね。

公文書に署名するときに「崎」って書くと、
警察や検察から因縁つけられて
虚偽記載で検挙されることはないと保証してほしいもんです。

だいたい先に引用した『字通』には、
崎の俗字なんて全く影も形もありませんもんね。

それに、
僕の名前は、
「崎」の画数でつけられているんです。
俗字だと画数が変わって縁起が悪い……
…ってこだわっているのは僕なのかな。

それにしても、
「探検」から始まったせいか、
密林で迷ったような文章になってしまいました。

おあとがよろしいようで。
チャカチャンリン♪チャンリン♪

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