2018-05-25

「森友」「加計」「アメフト」で思う「正直の求心力」と「嘘の遠心力」

ネコは嘘をつくのでしょうか。球太郎(ネコ、オス、4歳)
ネコは嘘をつくのでしょうか?
あるものを「ない」と言ったり、文書を改ざんしたりしていたことが明白になった「森友」「加計」の問題と、悪質タックルに端を発した「日本大学アメリカンフットボール部」の問題を同一視することの是非は、さておき…。

現時点(2018年5月25日)で、これらの事態についての報道などをネットやテレビなどで見て思い出したのが直木賞作家の山本一力さんがインタビュー=産経新聞文化部編『私の失敗』(文春文庫)収録=で語った言葉です。




以下は、その引用。

“正直は求心力を生み出すが、嘘がばれると強力な遠心力が働いてしまう”

浮気を繰り返した山本さんは隠れて女性とつきあうために限りなく嘘をついた結果、2度目の離婚を経験します。3回目の結婚を決めたとき、その相手以外に、つきあっていた複数の女性と別れ話をしたら「強烈な反応」にあったそうです。

そして、そこで初めて知ったことがあると言います。

それは…

“一方が本当のことをいえば、もう一方も、状況に向き合い、正確な判断ができる”

…ということ。

以上の2つの言葉はセットになっていて、正直であることに比例してヒトは集まってくる一方で、嘘はヒトを遠ざけてしまう。

これはわかりますよね。

以下は僕の解釈ですけど…。

大事なのは「正直」というのは時間もかけて積み重ねた三次元…つまり立体的なことが重視されるのですが、「嘘」って違うんですよね。

二次元的な平面のようなもので、それまでの「正直」を積み重ねてきた信用という立体を刃物のようにスパッと切断して、または壁のように堰(せ)き止めて、凍結したり化石にしたりする作用がありますよね。

「正直」を何層も積み重ねてミルフィーユ状にしても、“1枚”の「嘘」で台無しになってしまいます。

だから「嘘」によって、「正直」で築いた立体が壊れそうになると、さらに「嘘」で支えたくなるのも人情といえば、そうなんでしょう。

「もう“1枚”くらいならいいか」というわけです。

正直は最大の戦略


ところが「嘘」の成分は、矛盾と虚構なので、現実とは共存しにくい。

いろんなところに“ほころび”が出てきて、繕(つくろ)うために、何枚もの「嘘」のあて布が必要になってくるようです。

その悪循環を断つ最善の策は山本さんのように、本当のことを言うことなのでしょう。

「嘘」をつかれていた方も、「真実」とか「現実」が見えたら“状況に向き合い、正確な判断ができる”ようになって、互いにもう無駄な時間を費やさなくてもよくなる…山本さんはそれを“知った”ということですね。

まぁ、つまり「正直は最大の戦略である」ということですね。

これは僕が言っているのではありません。

『信頼の構造』『安心社会から信頼社会へ』などの著書で知られる社会心理学者で、人気サイト「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」の母といわれる、文化功労者の山岸俊男先生(北海道大学名誉教授)がおっしゃっていることです。

危機管理の観点からも示唆深い話です。

人間は自分を騙す


一方で、
ロバート・B・チャルディーニ著『影響力の正体』(SBクリエイティブ)によると、人間はそれまでの自分の言動に一貫性を持たせ、つじつまを合わせるために、自身が不都合な境遇にあっても

“自分を騙(だま)してまで、自分がどう考え、何を信じるかを、すでに自分がしたことや決めたことに必死にあわせようとする”

…ということが実証されているようです。

自分の過ちを認めないという態度は人間としては自然だともいえるのですね。

でも、そこは

“一方が本当のことをいえば、もう一方も、状況に向き合い、正確な判断ができる”

という経験を信じたい。

そこで頭に浮かんだのは、
国同士や社会も含めた「世の中」が分断されているときって、対立する双方が何かの理由で「本当のこと」を知らされず…つまり騙されて…正確な判断ができなくなっている可能性があるということです。

「正直は最大の戦略である」であるのなら「嘘は最悪の選択」ということなのでしょう。

現状を山岸先生なら、どのように分析されるのか。

ニュースでご存じの方もいらっしゃるでしょうが、先生は今月8日に70歳で亡くなられました。残念です。

0 件のコメント:

コメントを投稿