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2015-11-27

『ブルースエット』は、どこが「女」なのか。

「でもとにかく、A面の一曲めに『ファイブスポット・アフターダーク』っていう曲が入っていて、これが ひしひし ・・・・ といいんだ。トロンボーンを吹いてるのがカーティス・フラーだ。初めて聴いたとき、両方の目からうろこがぽろぽろ落ちるような気がしたね。そうだ、これが僕の楽器だって思った」=村上春樹著『アフターダーク』(講談社文庫)
僕は「トロンボーン奏者が出てくる村上春樹の小説がある」と聞いて『アフターダーク』を読みました。

トロンボーンを始めた直後ですから2006年の10月くらいだったはずです。で、『ファイブスポット・アフターダーク』が収録されている『ブルースエット』を買いました。もちろんレコードではなくてCDなのでA面もB面もありません。


目からうろこが…というようなことはなくて、出だしのベニー・ゴルソンのテナーサックスと、トロンボーンの音の区別がつかなかったくらいの時期でした。

2015-07-29

僕が小説を読む理由

戦後生まれで初めて芥川賞作家となった中上健次が亡くなったのは1992(平成4)年8月12日でした。享年46。

それからまもなく23年です。

亡くなった年の11月に「中上健次の最初で最後の『人生相談』」と銘打った『問答無用』(講談社)が出版されています。雑誌「ORE」1990年4月号から91年7月号まで連載された中上健次による「人生相談」をまとめた本です。

この中で、「小説家になろうと思っているのですが、やっていく自信がありません。中上さんは、どうなされたのか教えてください」という21歳の「U・T」という方と、
「将来、小説を書いてみたいと思いますが、中上先生は、構想などは、どのように組み立てていかれますか」という19歳の「K・K」という方からの相談があります。

この雑誌は男性誌だったようですので、この2人も男性だと思います。

中上健次の回答を要約すると…。

文学も、お稽古ごとと一緒だと思えばいい。
たとえば、ツン、トン、シャンという音が好きで、
三味線の練習をしているうちに、何かを表現したくなる。
文学もそれと同じ。
文章能力や構想などは文章が作ってくれる。
文章は肉体なので、チンポコ(文中の表現のママです)のある奴は文章を書ける。

2015-07-18

借り物の「物語」に踊らせていないだろうか

「あっ、これだったのか」と今ごろになって見つけました。

作家の村上春樹さんが、
中国、韓国に対する歴史認識の問題で、
<相手国が「すっきりしたわけじゃないけれど、それだけ謝ってくれたから、わかりました、もういいでしょう」と言うまで謝るしかないんじゃないかな。謝ることは恥ずかしいことではありません。細かい事実はともかく、他国に侵略したという大筋は事実なんだから>…と発言したということで、物議をかもしたインタビューの全体を初めて読みました。

47都道府県52新聞社のニュースと共同通信の内外ニュースを束ねた総合サイト「47NEWS」で公開されてまして、
聞き手は共同通信編集委員なので、共同通信の配信ですね。
日付けは2015年4月27日でした。

(上)(中)(下)の3部構成で、
「謝るしかない」に関係するところは全体のなかではほんの一部で、
全体のテーマの「村上春樹さん、時代と歴史と物語を語る」では付け足しのような印象を受けました。

僕が一番、関心を持って読んだのは、

2015-07-17

才能と火花

「ピース」という、お笑いコンビの又吉直樹さん(35歳)の小説『火花』が16日(2015年7月)、第153回芥川賞の受賞作に決まりました。

受賞すれば、お笑い芸人では初ということで、
候補作に選ばれたときから世間から注目されていました。
そんなわけで、
僕も注目していましたが、
この日は衆院で「安保関連法案」が可決したり、台風11号が大阪にも近づいていたりで、
忘れていました。
もちろん、文化部に在籍して文芸を担当をしていたときには、
何があろうとそんなことはなかったです、念のため。

文化部にいたときは、
文芸担当でなくても、
候補作は毎回だいたい目を通していました。
芥川賞の候補作は本になっていない作品がほとんどで、
掲載されている文芸誌で読んでおかないと、
一生、読むことがない恐れが大きいということもありました。

今回の「火花」は興味があったのですが、
すでに本になっていて、
いつでも読めるということもあって、
まだ読んでいませんでした。

ウィキペディアで「又吉直樹」を調べてみると…。

2015-06-29

「才能」の「代用品」

以前、『ウンベルト・サバ詩集』(みすず書房)から
「仕事」という作品を引用して、
自分で生きるために宝をさがす人のように深く掘らないと、ということを書いたことがあります。

意図もニュアンスもちょっと違いますけど、
村上春樹も「走る小説家」として自分自身について綴った本走ることについて語るときに僕の語ること』(文春文庫)で、
「掘る」ことに言及しています。

小説家にとって一番重要な資質は「才能」で、
次に「集中力」、続いて「持続力」だと書いている文章のなかで、
「才能にそれほど恵まれていない」作家たちは「集中力」を養い「持続力」を増進させて「才能」の「代用品」として使うことを余儀なくされる…と述べています。

そして、そこで培われた「筋力」で、
「スコップを使って、汗水を流しながらせっせと足元に穴を掘っているうちに」「自らの中に隠されていた本物の才能に巡り合うこともある」と書いているのです。
その「本物の才能」を「秘密の水脈」とも形容しています。

2015-05-27

才能と集中力と持続力


今年5月13日に119日間に及ぶ公開を終えた「村上春樹 期間限定公式サイト『村上さんのところ』には3万7465通のメールが寄せられたという。

このサイトは、
多くの方がご存じのように、
寄せられたメールに対して、
ノーベル賞候補作家といわれる村上さんが返事を書いていくという構成で、
「容赦ない」と話題になったのが23歳の女性(大学院生)からの“希望”に対する回答でした。

文章を書くのが苦手なのですが、
何とかなりませんでしょうか…というメールへの村上さんの返信が、
「文章を書くというのは、女の人を口説くのと一緒で、ある程度は練習でうまくなりますが、基本的にはもって生まれたもので決まります。まあ、とにかくがんばってください」
…でした。

確かに「容赦ない」のだけれど、
村上さんの書いたものを読んでいれば、
それほど意外な回答ではないですよね。

たとえば、
走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)』(文春文庫)の中の一文。

「小説家にとってもっとも重要な資質は、言うまでもなく才能である」と断言していらっしゃいます。

さらに、
「文学的才能がなければ、どれだけ熱心に努力しても小説家にはなれないだろう。これは必要な資質というより前提条件だ」と追い打ちをかけています。

で、次に重要なのは「集中力」、
その次は「持続力」だといい、
この2つは「才能の場合とは違って、トレーニングによって後天的に獲得し、その資質を向上させることができる」とのことです。

また才能を持った人間のなかでも、
シェイクスピア、バルザック、ディッケンズは、
その才能が枯渇することのない「巨人」だそうで、
世間の大半の作家は巨人ならざる存在だとしています。

村上さんは自身を「もちろん」と前置きして「大半の作家」の一人だとし、、
才能の不足分は集中力や持続力で補っていかないといけないとおっしゃっています。

小説家になる才能を持った人間がどれだけいるかは知らないのだけど、
僕自身に、その才能がないことは確信しています。

書いたこともないし、
書こうと思ったことがないのが、
その証拠ですね。

とはいえ、
才能にも色々とあります。
小説家の才能だけではないのは言うまでもない以前のこと。


わずかばかりのなにがしかの才能があったとしたら、
集中力と持続力があれば、
何とかなりそうな気がしますね。

その才能を自分で見つけることができなかったり、
他人に見つけてもらったりできないままで、
眠らせているケースが多いだけだ…といえば、
オチめいたハナシにはなるんでしょうけど、
どうも違うみたい。

結局、わずかながらでも集中力と持続力を使うに足る、才能があると信じられるかどうか、なんでしょうね。

信じたけど、本当はなかった、ということもあるに違いありません。

でも、本当に集中力と持続力が発揮できたとしたら、
それはまぁそれで生き方として悪くない。

「無能な働き者は害毒」だというハンス・フォン・ゼークト(1866-1936年)の考え方について以前に書きました。

これは才能がないのに集中力と持続力があるのは、
「無能な働き者」と似ているようですが、
全然違うような気がします。

僕の考えでは、
「無能な働き者」には集中力と持続力はないからです。
彼らにあるのは、
自分に負荷の少ない、
執着と惰性です。

もちろん、
これは無為に馬齢を重ねた反省から得た教訓です。