「でもとにかく、A面の一曲めに『ファイブスポット・アフターダーク』っていう曲が入っていて、これが僕は「トロンボーン奏者が出てくる村上春樹の小説がある」と聞いて『アフターダーク』を読みました。ひしひし といいんだ。トロンボーンを吹いてるのがカーティス・フラーだ。初めて聴いたとき、両方の目からうろこがぽろぽろ落ちるような気がしたね。そうだ、これが僕の楽器だって思った」=村上春樹著『アフターダーク』(講談社文庫)
トロンボーンを始めた直後ですから2006年の10月くらいだったはずです。で、『ファイブスポット・アフターダーク』が収録されている『ブルースエット』を買いました。もちろんレコードではなくてCDなのでA面もB面もありません。
僕が生まれてから2枚目に手に入れた米国ジャズのアルバムです。1枚目はというと、大学生のときに、中古で買ったアルバート・アイラー(サックス奏者)の『スピリチュアル・ユニティー』で、これはAB両面のある正真正銘のレコードでした。
1枚目と2枚目の間にはずいぶん年月があいてますけど、3枚目はすぐで、それからは1年もしないうちに100枚を越えました。そのあとペースが鈍って今で200枚ちょっとだと思います。
アイラーは中上健次のエッセイや対談に影響されました。中上健次には『破壊せよ、とアイラーは言った 』(集英社文庫)なんていうタイトルの著書もあるくらいですから、強烈に前衛的なものを期待したんですけど、当時の僕には、中上作品ほどのインパクトは覚えなかったので、ジャズへの関心も薄らいでしまいました。
で、『ブルースエット』はどうだったか。
ちなみに…。
もうすいぶん前に閉店しましたけど、かつて産経の大阪本社があった桜橋に「ドンショップ」というジャズ・ライブを聴きながら食事もできて酒も飲める店がありました。朝までやっていたので、社会部の泊まり勤務のときは午前2時くらいに朝刊最終版の締め切りのあとによく当直デスク以下、宿直メンバーで行ってました。そこで聴いていた演奏の多くは、あんまり抑揚がなくてサラッとしている印象だったので、僕はジャズっていうのは、だいたいはそんな音楽なんだ思っていました。
言い換えると、メロディが憶えにくいという感じですね。
ところが、『ブルースエット』は、そんな印象とは違って“濃かった”。
これも言い換えると、メロディが憶えやすい。1回聴くと、最初の八小節はハミングできそうな気がしました。
『ブルースエット』の原題表記は「BLUSE ette」、「ette」というのは、「…の代用品」という意味があるので、僕は最初、訳せば「ブルースもどき」だと思っていたのですが、「…の女の人」という意味もあって「ブルース女」というニュアンスが正しいそうです。まぁ、それで、このシュールなジャケットも納得できますけどね。
でも、中身はどこが「女」なのか…僕にはわかりませんでしたけど、このアルバムに新鮮な驚きを感じてかなり熱心にジャズを聴くようになりました。
僕にとってジャズの名盤を10枚挙げろと言われたら、必ず『ブルースエット』は入ります。
…というわけで、しばらくは、トロンボーンの入ったジャズアルバムの紹介をしようかなと思っています。
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