1957年に録音された『ニュー・トロンボーン(NEW TROMBONE)』
ハード・バップの最盛期に登場し、その前のビ・バップ時代云々という講釈は専門家に任せておいて…。何よりジャケットがいいですね。
田舎の駅のホームに立つ楽器ケースを持つフラー…。いかにもこれからジャズシーンに向かっていくぜ!って感じがなんともいえず、これから新しい世界での活躍をめざす若者に、このジャケット写真でもプレゼントしたくなるほどです。もらったほうは別に嬉しくないような気もしますけれどね、中に餞別でもはさんでおけば受け取ってはくれるでしょう。
ジャズトロンボーン奏者といえば…このヒトっていわれるJ.J.ジョンソンが1924年生まれ(2001年没)ですから、フラーはちょうど一世代あとになります。
トロンボーンはスライドを伸縮させて音程を変えるっていう少々、楽器の中でも異端なところがあって、同じ金管楽器でもピストンやバルブを使うトランペットと違ってスピーディな演奏にはあんまり向いていない…という“常識”を破ったのがJ.J.で、嘘か本当か、僕は確かめられていないのですが、J.J.のアルバムには「これはバルブトロンボーンじゃありません」っていう注意書きがあったといわれるほどの高速フレージングでした。
ジャズの変遷のなかでのスピード化についていけないと凋落気味だったトロンボーンへの評価を変えてしまったのがJ.J.で、いわば「中興の祖」みたいな巨人(ジャイアンツ)です。
そんな地ならしがなければ、トロンボーンはジャズの世界から退場していたかもしれず、フラーの出番もなかったかもしれません。
とはいえ、ジャズトロンボーンといえば名前が出てくるJ.J.と双璧のフラーの演奏は、中音域で速いパッセージを展開したJ.J.とは対照的にトロンボーンの魅力でもある低音域を活かしながら、ハード・バップ以降のジャズシーンで違和感なく新鮮な演奏を披露してきました。
だいたいジャズのトロンボーンというのはテナーで、さらに細管が定番のイメージがあるし、実際、そうなんですけど、フラーは太管を使っているんですね。
それが他の奏者との差別化を図るための戦略だったのか、単なる本人の趣味だったのか、僕はわかりませんが、太管は確実にフラーの個性として演奏と一体化していて細管でのプレーは想像できません。
で、曲はというと出だしの「ヴォンス♯5」がトロンボーンとアルトサックス(ソニー・レッド)が「待ちかねた!」っていう感じで疾走するイメージです。フラーは20代前半ですからエネルギーがほとばしっているのが伝わってきます。
乾燥しているのにシズル感がある…言葉にすれば、そんなふうになるでしょうか。
ジャズアルバムで僕が最も好きな1枚は?と聞かれたら、迷わず、『ニュー・トロンボーン』と答えます。
元気にもなるし、じっくりも聴かせてくれる。僕は一番繰り返し聴いたアルバムで、これからも何度も繰り返し聴くでしょう。

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